CTI OSC5A2B02 10MHz OCXOクロック基板を調べてみた
3年前に購入した際に記事にした激安の「10MHz OCXOクロック」についてです
知識もそれなりについてきた現在、改めて調査をしなおしてみました
写真で確認できる範囲と、一般論として言える範囲を分けて書いています

写真から確認できる内容

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OSC5A2B02について

搭載されたCETC 54系OCXOは、通信基地局や放送設備、計測器など、社会インフラの基準信号源として設計されたものです。24時間365日の連続稼働や過酷な温度変化を前提とした、業務用・通信機器用途としての高い耐久性と安定度を備えた出自を持っています

OCXOの刻印
金属ケースの発振器には、以下の刻印が確認できます
・OSC5A2B02
・CETC 54(第54研究所系の表記)
・10.000MHz 表記

つまり、CETC 54系の OCXO(恒温槽付水晶発振器)を使った 10MHz クロック基板という説明は、写真と整合しています
出力は TTL と Sine が1系統ずつ
SMA端子横のシルク印字で、出力が分かれています
・OUT_TTL(矩形波出力)
・OUT_Sine(正弦波出力)
周波数調整と LT1009 表記のIC
基板上に周波数調整用のトリマ(可変抵抗)があり、微調整を前提とした構成です
さらに、トリマ付近の 8ピンICには LT1009 のマーキングが確認できます
LT1009 は OCXO / VCXO の制御回路で定番の基準電圧IC(2.5V精密リファレンス)なので、構成として筋が通っています

基板全体としての注意点(オーディオ用途の現実)

エージングと調整範囲
OCXOは高安定な一方で、経年変化(エージング)で周波数が少しずつ動きます
この基板はトリマで追い込めますが、個体によっては調整範囲がギリギリになる可能性もあります
「買って挿すだけで常に完璧」ではなく、必要なら測定して合わせていく前提のほうが安心です
電源の質が音の印象を左右しやすい
単体の素性が良くても、基板の電源回路や外部電源の質で性能を活かしきれないことがあります
本基板には低ドロップアウト・レギュレータ LM2940S-5.0 が搭載されており、5Vで動作していますが、外部電源ノイズをどこまで遮断できるかが肝になります
オーディオ用途なら、ACアダプタよりも低ノイズなリニア電源との組み合わせが結果が出やすいと思います
ウォームアップ前提
OCXOは恒温槽で温度を一定にして安定させる構造です
そのため、電源投入直後よりも、内部温度が安定するまで時間がかかります
目安としては 30分〜1時間くらい見ておくと気持ちがラクです

仕様表(写真個体ベース)

項目 内容
製品 CTI OSC5A2B02 10MHz OCXOクロック基板(流通名)
発振方式 OCXO(恒温槽付水晶発振器)
搭載OCXO CETC 54系 OSC5A2B02(刻印確認)
公称周波数 10MHz(刻印確認)
出力系統 2系統 :Sine(正弦波)×1系統 / TTL(矩形波)×1系統
出力表記 OUT_TTL / OUT_Sine(基板シルク確認)
出力端子 SMA
周波数微調整 トリマ(可変抵抗)あり / LT1009 制御
電源入力 DC 7〜13V @ 1A以上(基板シルク確認)
メインLDO LM2940S-5.0(5V出力・低ドロップアウト)
補足
絶対精度(ppb)や位相雑音も、元仕様だけでなく「現在の個体状態」「電源」「実装」で変わるので、実測前提で考えるのが安全です

10万円クラスのクロックと「10.000000MHz」の考え方

想定精度の比較(目安)
項目 10万円クラス
外部10MHzクロック
CTI OSC5A2B02
OCXO基板
公称周波数 10.000000MHz 10.000000MHz
メーカー想定の目標 実用上十分に近ければOK 測定して追い込む余地あり
ズレ量の目安(10MHz換算) ±0.1〜0.5Hz 程度を想定 ±0.05〜0.1Hz を狙える可能性
調整前提 基本不要 トリマ調整が前提になりやすい
音への影響で重要な要素 位相雑音、電源、温度安定 電源、実装、調整状態が支配的
注意
10.000000MHz にピタリ一致していることが、そのまま音質の優劣になるわけではありません
オーディオ用途では、短期安定度や位相雑音、電源ノイズの影響のほうが大きいです
10万円クラス完成品はそれらをまとめて整えてきますが、CTI基板は「素材を渡された状態」なので、電源・シールド・温度環境によって性能が大きく変わります

仕様のまとめ

CTI OSC5A2B02の OCXO 基板は、以下の点で写真と内容が一致する実直な構成の基板でした
・CETC 54系 OCXO(OSC5A2B02)搭載
・出力は TTL×1 / Sine×1
・LT1009 精密リファレンスと多回転トリマで周波数追い込みが可能
ただし完成品クロックのように「挿せばOK」ではなく、DC 7〜13V @ 1A の安定した電源供給や、精密な調整、ウォームアップを含めて自分で追い込んでいくタイプです

10万円クラスの外部10MHzクロックと比べると、手軽に安定した結果を得るなら市販完成品、徹底的なコストパフォーマンスと追い込みの余地を楽しむならこの基板、という立ち位置だと思います

実際の精度は、どれくらい?
個体差は当然あると思うが実際の精度は、どの程度のものでしょうか?

以下、Amazonのレビューコメントより
ケースに入れてレギュレータICを冷やすと調整精度が出て周波数が安定出来ます。私は真鍮板で作りました。ケースと放熱板をうまく作ればカタログ精度は出るような気がします。抵抗値変更だけでは精度が0.18Hzでした。
スクリーンショット 2026-02-09 114301

精度を出すには、レギュレータICを冷却するのが肝のようです

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LHYのリニア電源が1口あまっていたので、こちらから給電してみた
消費電力は、このような感じでした
また、レギュレータには小さいヒートシンクをつけていますが触れる程度の温度です

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GUSTARDのDDCとの比較
中古平均相場:U12(約0.9万円)、U16(約2.4万円)、U18(約4.5万円)のDDCと比較してみよう
項目 GUSTARD
U12(内蔵)
GUSTARD
U16(内蔵)
GUSTARD
U18(内蔵)
CTI
OSC5A2B02
チップ名
(採用素子)
一般高精度SPXO Accusilicon
AS318-B
Accusilicon
AS338
CETC
OSC5A2B02
クロック種別 水晶発振器(XO) フェムト秒水晶(XO) フェムト秒水晶
(XO)
恒温槽付水晶
(OCXO)
温度制御 なし なし 疑似定温制御回路 物理オーブン
(ヒーター)
周波数安定度 ±100 ppb ±50〜100 ppb ±50 ppb ±1〜10 ppb
位相雑音(10Hz) 約 −70 dBc/Hz 約 −85 dBc/Hz 約 −100 dBc/Hz 約 −110 dBc/Hz
RMSジッター 167〜205 fs 80〜120 fs 38〜80 fs 100〜500 fs(※1)
基準電圧源 内蔵LDO 内蔵LDO 高精度LDO LT1009(独立IC)
電源消費 極小 極小 小 (安定時 約2W)

数値から見る決定的な違い

周波数安定度(ppb)
CTI製OCXOの 1〜10 ppb という数値は、U18 などの内蔵チップクロックと比較しても「時間あたりのズレの少なさ」という点で、約10倍〜100倍の精度差があります
長時間動作時の基準として見た場合、この差は無視できないレベルです
位相雑音(10Hz)
超低域側の位相雑音(10Hz付近)では、CTI製OCXOが最も低い数値を示します
これは、物理的に大きな水晶振動子を高温で安定させているOCXOならではの構造的な強みと言えます
ジッター(fs)
一方、瞬間的な揺らぎを示すジッター値に関しては、最新の U18(AS338)が最も優れた数値を示し、最小 38 fs という結果になります
この点では最新チップに譲りますが、SU-2 などの DDC 側にある FIFO/FPGA 回路を通すことで、OCXO の「空間的な安定度」という長所を活かせる可能性があります

※1 CTI製OCXOのジッター値は、OCXO単体の公称値ではなく今回のような出力基板を介した際の一般的な推定値です

数値が定義する「性能の正体」

1. 「ppb(安定度)」= 空間の揺るぎなさ
OCXO(CTI)
数値が低い(=安定度が高い)ほど、時間経過による周波数のドリフトが抑えられます
この数値の差は、音像の定位を「点」としてどれだけ強固に固定できるかという空間合成の精度に直結します
物理的なオーブン(恒温槽)による ppb 単位の制御はチップ水晶では到達できない領域です
2. 「近傍位相雑音」= 低域の解像感
OCXO(CTI)
1Hz〜10Hz といった、キャリア周波数に極めて近い部分のノイズレベルを示す指標です
数値が低いほど、可聴帯域における低域の濁りが減り基音の輪郭がより明瞭になります
3. 「fs(ジッター)」= 高域の透明度と鮮度
AS338(U18)
現代の半導体プロセスで製造される AS338 は、この fs(フェムト秒)単位のジッター低減に特化しており、高域の倍音成分の鮮やかさにおいて数値的な優位性を持ちます

性能評価の結論

「正確な物差し」としての性能
CTI OCXO
時間の経過や温度変化に左右されない基準信号としての安定性(Stability)は、物理的な構造が勝る OCXO が数値で強いです
「高速なレスポンス」としての性能
AS338(U18)
デジタル処理における瞬間的なタイミングの正確さ、すなわちジッター性能では最新の集積回路技術が数値的にリードしています



aune XC1 10MHzクロックとの比較
完成品の外部10MHz OCXOクロック「aune XC1」と、今回の CTI OSC5A2B02(基板)を仕様/構造ベースで比較してみよう
項目 aune
XC1(完成品)
CTI
OSC5A2B02(基板)
クロック種別 恒温槽付水晶(OCXO) 恒温槽付水晶(OCXO)
温度制御 物理オーブン
(ヒーター/恒温槽)
物理オーブン
(ヒーター/恒温槽)
周波数安定度 <10 ppt(typ) ±1〜10 ppb(目安)
位相雑音(10Hz) 非公開(比較不能) 約 −110 dBc/Hz(目安)
RMSジッター 非公開(比較不能) 100〜500 fs
出力系統 Sine×2 / Square×2
(4系統同時)
Sine×1 / TTL×1
出力分離(干渉対策) 各出力独立(アイソレーション設計) 最小限(基板/配線/接続方法に依存)
出力条件 >7 dBm(50Ω) 未記載(比較不能)
立ち上がり <2.75 ns 未記載(比較不能)
ウォームアップ 5分(基本)/ 60分(完全) 30分〜1時間(目安)
電源設計 筐体内で完結(完成品)
電源・シールド込みで再現性が高い
LM2940S-5.0 系で5V化
外部電源/配線/シールドの影響が大きい
基準電圧源 未確認(比較不能) LT1009(独立IC)
電源消費 未記載(比較不能) 小(安定時 約2W)

数値と構造から見える違い

周波数安定度(ppt/ppb)
XC1 は <10 ppt(typ) を掲げており、単位の桁としては ppb のさらに下(= 1/1000)です
一方、CTI は ±1〜10 ppb(目安) として整理しているため、仕様表の記載だけで見るとXC1が上位という扱いになります
出力設計(同時接続の前提)
XC1 は Sine×2 / Square×2 の4系統を同時出力し、各出力が独立(アイソレーション設計)という前提で使えます
対して CTI 基板は Sine×1 / TTL×1 のシンプル構成で、配線・分配方法・外部電源が結果を左右しやすい「素材」寄りです
比較できない項目(位相雑音/ジッター)
CTI は 10Hz近傍の位相雑音やジッターを“目安”として整理できていますが、XC1 は同条件の公開データが少なく、数値比較は成立しません
この領域は、メーカーが位相雑音カーブ(10Hz/100Hz/1kHzなど)を公開しない限り、結論を断定しないのが安全です